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「グッド・バッド・ウィアード」

「満州」舞台に痛快大活劇

「グッド バッド ウィアード」

 日本映画の父、牧野省三の名言「一スジ、二ヌケ、三動作」を地で行く痛快大活劇。「コミック残酷劇」なる珍無類のジャンルを立ち上げた韓流の中堅監督キム・ジウンの作品。一九七〇年代初頭、一世を風靡したマカロニ・ウェスタンをしのぐ荒唐無稽さが何とも魅力的だ。
 舞台は一九三〇年代、日本軍占領の満州。そこでの日本軍の宝の地図を巡る乱闘劇が物語の軸だ。威張り散らす日本軍人を尻目に、賞金稼ぎ、ギャングの親分、そして厚かましい泥棒の三人が満州、中国、ゴビ砂漠を縦横無尽に駆け巡り、地図の奪い合いを演じるガサツさが物語自体を骨太に仕上げている。

 マカロニ・ウェスタンではクリント・イーストウッドがスーパースターだったが、今作は韓流スター三人、チョン・ウソン(賞金稼ぎ)、イ・ビョンホン(ギャングの親分)、ソン・ガンホ(泥棒)が勢ぞろい。二枚目スターに挟まったソン・ガンホが独特のルックスを生かして場を取るあたり、顔力(ガンヂカラ)の発露といえよう。
 冒頭の列車強盗での三人の顔合わせ、怪しげな阿片窟の書き割りのようなセットの狙いとしての陳腐さ、ゴビの砂漠でのクラシックなオートバイと馬の疾走と、見どころにあふれている。さらにラストの三者の三角形に陣取る対決シーンは全員討ち死にのはずだが、どうも生き残りがいる様子、不思議なのだ。
 荒唐無稽さをここまで押せば立派な芸となる。昨年のカンヌ映画祭での上映時、米国某映画誌は「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」よりもはるかに面白いと評したのは正解。
2時間9分。





2009年8月28日 東京新聞夕刊掲載(今週の注目)

中川洋吉・映画評論家