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不滅の愛 深紅多用し演出
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「抱擁のかけら」
(c) Emilio Pereda&Paola Ardizzoni/El deseo
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不滅の愛をメインテーマとするペドロ・アルモドバル監督の世界。これは映画的感興をそそる優れた一作だ。彼と、今や世界一の美女と誉れ高いペネロペ・クルスとのコンビ。溝口健二と田中絹代、新藤兼人と乙羽信子を思い起させる。
主人公のハリーは盲目の元映画監督で、今は別の人生を送っている。その彼を過去の世界へ引戻す若者の突然の訪問から物語は始まる。
ハリーの現役時代、一人の若い女性レナ(クルス)が現われ、彼の作品に出演する。超美人で、財界大物の愛人がいるが、何不自由のない生活に嫌気が差し、女優になる念願の夢を叶えるためハリーのもとへやってくる。そして二人は恋に落ちるが、彼女の愛人はしっと嫉妬に狂い、嫌がらせを行う。
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「抱擁のかけら」
(c) Emilio Pereda&Paola Ardizzoni/El deseo
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アルモドバルは死んだはずの人間を再登場させる手法をこれまでの作品でももちいてきたが、今作も同様だ。しかし、その脚本の複雑さにかかわらず、難解な観念性がない。そこが、多くの観客に受入れられるところであろう。
主演のクルスは単なる美人女優の域を抜け出ている。彼女が愛人関係にある男とベッドを共にするシーン。男は死んだふりをし、驚ろかそうとする。本当に死んだと思った彼女は、“生き返った男”の姿を見てニンマリするが、その演技は秀逸。
ハリウッド映画の世界的退潮の中、代りにスペイン、南米映画が台頭。劇中、多用される鮮やかな赤はスペインの大地を表わす。描き出される濃密な人間関係は、監督アルモドバルの人間に対する希望であり、慈しみととれる。生きることのいとおしさが滲み出ている。
二時間八分。
「全国公開中」
2010年2月5日
東京新聞夕刊掲載
中川洋吉・映画評論家
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