このサイトからダウンロードできる
PDFデータの閲覧のために必用なAcrobatReaderは以下のリンクより
無償でダウンロードできます。



このサイトからダウンロードできる
PDFデータの閲覧のために必用なAcrobatReaderは以下のリンクより
無償でダウンロードできます。



「のだめカンタービレ」最終楽章 前篇

愛の物語前面にリメーク

 日本の出版は二つある。一つは漫画、もう一つは佐伯泰英の時代小説だ。その漫画で三千二百万部を売った二ノ宮知子の「のだめカンタービレ」が原作である。この超ベストセラーに目を付けたのがテレビ局、その後飛びついたのが映画であり、典型的なヒット狙いの製作委員会方式作品だ。

 野田恵(のだめ)(上野樹理)はピアニスト、千秋(玉木宏)は指揮者。物語の中心は二人のパリでの音楽修業。千秋はボロオーケストラの常任指揮者に任命されるが、レベルが低くおまけに非協力的で悪戦苦闘。その彼が一人前にオーケストラを御すまでの成功譚が綴られる。

 テレビの人気ドラマだけに、観客のツカミが上手い。「三回泣かせ、四回笑わす」のテレビドラマの鉄則に則っている。泣き笑いの代りに、世界遺産的な観光名所の多用。シャンゼリゼ、エッフェル塔、セーヌ・サン・ルイ島の高級アパルトマン、おまけに海上の修道院、モン・サン・ミッシェルとお決まりの絵葉書的風景がずらりと並ぶ。更に、ウィーンフィルの本拠地、楽友協会ホールでの演奏場面には驚かされた。もう一つは、ふんだんに聞かせる、お馴染みのクラシック名曲。華麗な景色、そして音楽に乗せての二人の恋の成行きと、受け狙いのツボは外さない。

 千秋役の玉木宏の「俺、いい男」振りがサマになり、体育会系、非フェロモン派の上野樹理も柄だ。但し、彼女の舌足らずなカマトト調の話し方はクサイ。
 立派なお膳立て、Xマス季節のカップル向きだが、今ひとつ主人公二人の描き方に膨らみが欲しかった。

2時間1分




 

中川洋吉・映画評論家