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『リュミエール!リュミエール!』
130年前の映画フィルムを網羅
リュミエール兄弟発明の「動く写真」

 世界初の映画フィルムを網羅した『リュミエール!リュミエール!』(2024年製作・103分、フランス)が公開された。それは今から130年前に撮られた『動く写真』である。同作は、フランス第2の都市リヨン在の映画人ルイ(1864−1948)とオーギュスト(1862−1954)リュミエール兄弟が発明した、1895年のシネマトグラフに端を発している。19世紀末のフランス、そして世界中で、写真は動かないものとされ、当時の人々には驚きを持って迎えられた。

 
このシネマトグラフは、「動く写真」のために撮影し上映する画期的装置。この発明により、映像の世界が始まる。彼ら兄弟2人の作品は『工場の出口』(リヨンのリュミエール工場を退出する工員の一コマ)、『水を撒かれた散水夫』などが世界で初めて有料公開された。
彼らは機器の発明と共に、興行の世界へ足を踏み入れ、映画を大きな産業に仕立て上げた才人でもある。また2人は映画撮影も手掛け、当時、リュミエール工場の専属カメラマンたち30−50人は世界各地に派遣され、撮影を実施した。
出来上がった映画作品はドキュメンタリーで、この映像により、見知らぬ世界に触れることとなる。例えば、世界中の人々がパリを見て思いをはせる。フィルムは全長17b、幅35_、1本約50秒と短い。それらは1895年から1905年にリュミエール研究所(工場)により1422本製作された。
今回上映される作品は、2017年1月25日に『リュミエール!』として既にフランスの45館で公開され(日本では17年10月24日公開)、13万6000人動員した。ドキュメンタリーとしては大成功の部類である。
今回の『リュミエール!リュミエール!』は、前作同様、リュミエール作品をつなぐドキュメンタリーである。現存する1422本の50秒のフィルムの内、110本が取り上げられている。

工場の出口    (C)Sortie d'usine productions   (C)2017, Institut Lumiere, Lyon

第37回東京国際映画祭ティエリー・フレモー監督来日時

映画史研究者ティエリー・フレモー

 本作の監督・脚本・編集・プロデューサーを務めるのが、映画史研究者のティエリー・フレモーである。彼は根っからの映画好きで、この11月、自伝的エッセイ『黒帯の映画人』の紹介のため、5日間東京に滞在し、試写会を開き、インタビューを受ける。
彼の著作『黒帯の映画人』のタイトルは、彼自身のことである。彼はリヨンに生まれ育ち、現在はパリでカンヌ国際映画祭の芸術監督を務める。
大学はリヨンで、根っからのリヨンっ子である。9歳の時から柔道を始め、少年、青年時代はまさに柔道一筋で、四段まで取得する。同著の中で、自身の柔道体験を語り、更に、フランス柔道構造についても触れる。フランスは柔道大国で、約50万人の柔道家がおり、その数は日本の柔道人口の4倍を誇っている。
彼は、柔道以外に映画にも多大な関心を払い、大学を出た後は、リヨンのリュミエール研究所に入る。この研究所はリュミエール作品の保存・管理をする機関であり、ここで彼は働き、現在は同研究所の所長を兼任している。
映画界へ足を向けた彼は、カンヌ国際映画祭からも声が掛かり、2001年に芸術監督として作品選考を担当、17年に総監督に就任する。このため、年間2000本の応募作品の内約130本を見て、その年の出品作を決めている。1年の半分をカンヌ、残りはリヨンと、映画界の要職にあり、映画に自身の一生を捧げる毎日である。
『リュミエール!リュミエール!』は、日本では既に11月22日からシネスイッチ銀座ほか全国で順次公開されている。
フレモ―の著書『黒帯の映画人』(発行:カンゼン)は10月から書店に並んでいる。 
  




(文中敬称略)

《了》

映像新聞2024年12月9日号より転載

 

中川洋吉・映画評論家