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身近な社会的テーマ1800本集結

今年で19回目を迎えたFIPA(フィパ、国際テレビ映像フェスティバル)が1月24日から29日までフランス・ビアリッツ市で開催された。全体のエントリー数は1800本、アジアでは32人の大使節団を派遣した中国が75本、日本からは過去最高の39本であった。

日本からは、コンペ部門に「にがい涙の大地から」(海南友子、ドキュメンタリー部門)、「“大地の子”を育てて〜中日友好楼の日々〜」(佐藤稔彦、齊藤賢治、ルポルタージュ部門)、「ひとり団地の一室で」(松木秀文、ルポルタージュ部門)の3本が選ばれた。硬質な社会性に富む作品であったが、日本初の入賞はならなかった。

(C)NHK

「ひとり団地の一室で」は、選定ディレクターである、ピエール=アンリ・ドゥロ総代表によれば、「孤独死の問題は日本のみならず、世界的な関心ごとであり、テーマ的に優れている」と評価されただけに、残念であった。

ルポルタージュ部門の金賞は、「デッチ上げ」(スウェーデン)である。娘から強姦で訴えられる父親が主人公で、司法の誤りが検証され、その力感に圧倒される。担当検事がインタヴューに答えるシーンも見物である。

FIPAには、世界の映画学校の作品などを紹介する学生部門がある。今年、日本からは日大芸術学部映画学科が招かれた。作品上映後のディスカッションでは、他の学校から多くの質問や意見が述べられ、有意義な交流の場となった。

年々、テレビ映像が娯楽化へと向かっている世界的傾向の中で、身近な社会的テーマが主流のFIPAは、世界に開かれた貴重な窓である。

朝日新聞「Around the World」2006年3月2日(夕刊)

中川洋吉・映画評論家