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2010年を展望する

−製作委員会方式が順調の邦画−

中川洋吉

 日本映画の暫定統計によれば、興行収入は二千億円前後、邦画占有率は50%強、洋画は50%を割り邦高洋低の状況だ。
これは2008年のデータだが、さほど大きな変化はない。世界の映画市場を席巻していたハリウッド勢の長期低落傾向に歯止めがかからないのだ。

 邦画優位の要因は、今更言うまでもないが、
大手資本相乗りの製作委員会方式の順調な稼動に負うところが大きい。
映画の興行収入の70%以上が、このシステムで作られている。
今年は「劇場版 TRICK 霊能力者バトルロイヤル」(春公開)等がある。
映画会社が観客動員数を読める、子供向けの作品「クレヨンしんちゃん 超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁」(四月公開)などは健在。
コミックの原作はやはり根強い。山田洋次監督の十年振り現代劇「おとうと」(一月公開)、村上春樹原作の「ノルウェイの森」(十二月公開)も注目作。
洋画ではシリーズ完結篇となる「ハリー・ポッターと死の秘宝」の前篇が十一月。後篇が十一年夏に公開される。

 製作委員会方式作品に押され、アート系の映画館は苦境に立たされている。原因は若い観客層の大幅減にあると見られる。
その中で健闘するのが岩波ホールなどの老舗。昨年暮に封切られた「カティンの森」は連日満員。今年のラインアップは充実しており、カンヌ国際映画祭パルムドール受賞の「パリ20区、僕達のクラス」(六月公開)が含まれている。

 手堅い製作委員会方式は着実に収益をあげ、日本映画界は、これらを中心に廻るだろう。定番の作品が目立つが、思わぬ作品の大ヒットというサプライズも無きにしもあらずだ。



東京新聞夕刊
2010年1月8日掲載号


中川洋吉・映画評論家