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東京新聞 [ 2007年12月28日掲載 ] [ 2008年1月4日 掲載 ]


「日本映画展望(2)− 国立映画センター創設を」


 世界の映画界が常に頭を悩ませる問題は、如何にアメリカ映画の進出から自国映画産業を守るかの一点に尽きる。
 そのための防護装置が、国による映画振興・助成制度である。フランスの国立映画センター(CNC)、アジアでは韓国の映画振興委員会(KOFIC)がその代表だ。
 国の文化政策としての映画振興・助成制度は、未だ我が国に存在しない。CNCの年間予算は約800億円、KOFICは約60億円、日本は文化庁予算として映画に22億円が計上されている。
 人材育成のための国立映画学校の創設、広範な若手監督、脚本家への助成、小プロダクション作品、アート系作品への助成、海外からの助成による共同製作などが当面の課題だ。また、興行資本優位の配給システムの是正と、製作側への利益配分の見直しなど、映画振興・助成を推し進める柱が必要である。
 財源は、先ず、映画業界の自助努力として、KOFICのような、映画入場料の3%拠出も一つの方法だ。また、テレビ業界、そして、これからの映像を担うIT業界からの拠出を仰ぐことも考えられる。
 基本的な考え方は、今まで、映画各社が管理してきた入場料金の一部を会社間の枠を離れ、資金を映画産業全体へと注入することである。
 そのための、映画振興を一元的に担う機関として、国立映画センターの創設の時期が来ている。
 また、現在、直ぐに実現可能なものとして、懸案であるフィルム・センターへの映画フィルムの法定納入制度が挙げられる。これは、文化的財産である映画フィルム保存のために是非とも実現したい。現在、我が国の著作権法では、映画監督に著作権者の資格が認められず、作品の権利を有するのは製作会社である。製作者としての監督個人の利益保護の面から、映画監督への著作権付与が望まれる。



(文中敬称略)
東京新聞夕刊 2008年1月4日 掲載

参考文献:「生き残るフランス映画 − 振興制度と助成」 中川洋吉著
希林館  TEL : (03) 5397-8776

中川洋吉・映画評論家